よく混同されるAVとピンク映画。AVを映画館で上映しているだけでは?と思っている人もいるかもしれません。しかし、実はこの2つの世界は大きく違うのです。
60年代から続くピンク映画
ピンク映画という言葉を聞いたことがありますか?
ピンクな映画、つまりセックスシーンをメインとした成人向けの映画のことです。厳密に言うと、大手映画会社以外で制作されたエッチな映画ということになります。なので、70年代から80年代にかけて人気があった日活ロマンポルノ(にっかつロマンポルノ)は、ピンク映画ではありません。現在はそのほとんどをオーピー映画という会社が作っています。
ピンク映画は60年代に生まれ、70年代から80年代前半にかけて全盛を迎えました。年間200作もの新作が作られ、アカデミー賞を受賞した滝田洋二郎さんや、『Shall we ダンス?』の周防正行さんなど多くの映画監督も輩出しています。
しかし80年代後半からはAVに押されて、人気は急落してしまいました。
80年代には全国に千館以上あったと言われる成人映画館も、現在はわずかに44館のみとなっています。
しかし、それでも今でもオーピー映画が年間36作の新作を制作しています。
ピンク映画はあくまでも映画
現在のピンク映画の主演は、ほとんどがAV女優です。
そのため、ピンク映画とAVを混同している人も多いようですが、実はかなり違います。
ピンク映画は、あくまでもセックスシーンが多い「映画」です。
最も大きな違いとしては、ピンク映画では本番、つまり実際にセックスはしておらず、すべて演技となっています。
そのため、男女共に局部には、前張りと呼ばれる布を粘着テープで貼って撮影します。
またAVのようにモザイク修正は使わないために、セックス時の下半身はアングルを工夫することで映らないようにしています。
この他、一作は60分から70分と短く、主演を含む3人の女優が必ず出演し、それぞれ濡れ場(セックスシーン)を見せる、といったルールがあります。
ラブロマンスやサスペンス、コメディからSFまで内容は多岐にわたっていますが、濡れ場はドラマの中にきちんと組み込まれています。セックスシーンがあくまでも中心であるドラマ物AVとは、そこが違うのです。
AVより厳しい撮影現場
ピンク映画の撮影期間は3日間。120分以上の作品を一日で撮影することが多いAVに比べれば長いように思えますが、ピンク映画はあくまでも映画。一般の映画が一ヶ月以上かけて撮影することから考えれば、かなり厳しいスケジュールです。
そのため3日間といっても、夜中や明け方まで撮影が続くことも珍しくありません。撮影期間は、ほとんど眠れないということも。
さらに、あくまでもAV女優が主役であるAVとは違い、映画では主演であっても、登場人物の一人に過ぎません。主役はいわばストーリーです。
ADなどのスタッフが、すべての世話を焼いてくれるAVの現場とは違い、ピンク映画の現場では女優は自分のことは自分でやらなければなりません。
ヘアメイクも自前、衣装も自分で用意しなければならないのです。
お姫様扱いしてもらえるAVの世界とは、まるっきり違うのがピンク映画の世界なのです。
AV女優がピンク映画に惹きつけられる理由
スケジュールも厳しく、扱いもよくないというピンク映画の撮影現場。
しかもギャラはAVよりもかなり少ないのです。
そうなると、ピンク映画に出るメリットは全くないように思えるかもしれません。しかし実際には、積極的にピンク映画に出演したいというAV女優も多いのです。
それは、やはりピンク映画が「映画」であるからでしょう。AV以上に、作品を作ろうという熱気がそこにはあるのです。
もともと役者に憧れを持っていた、あるいはAVのドラマ物の撮影で演技の面白さに目覚めたという人にとっては、ピンク映画の撮影はやりがいのある仕事に感じられるのです。
ピンク映画は制作費も少ないため、場合によっては監督が自費をつぎ込むことも珍しくないそうです。ある意味で、商売ヌキで情熱で成り立っている業界だとも言えるのです。
あくまでもお金を稼ぐためにAVをやりたいという人には向きませんが、みんなで作品を作ることに興味を持っている人には、ピンク映画の現場は魅力的に感じられるのではないでしょうか?